2012年5月28日月曜日

10年ごとに起きる原発最悪事故

10年ごとに起きる原発最悪事故(南ドイツ新聞2012年5月24日付)


本文はこちら:
http://www.sueddeutsche.de/wissen/reaktorsicherheit-ein-super-gau-pro-jahrzehnt-1.1365163

クリストファー・シュラーダー(Christopher Schrader)

見出しの予想は、過激な環境保護グループの謳い文句ではなく、なんとマックス・プランク研究所から出たものだ:これからまだ20年から25年稼動し続ける原子炉は、その稼動期間に2度、メルトダウンする可能性がある。しかし、この予測算出に対しては、反対意見もかなりある。

原子力発電所の大事故や放射性物質による広範囲の土地の汚染は、今まで予想されていたよりどうやらずっと確率が高いかもしれない。西ヨーロッパ、ことにドイツの一部はそれによると、平均して50年ごとに、放射性セシウムの雲が人口の多い都市の上に広がることを覚悟しなければいけないようだ。

原子炉の事故が起きた場合の、危険な核種セシウム137の拡散の可能性(©ダニエル・クンケルによる地図、マックス・プランク研究所化学部門、2011年、編集:南ドイツ新聞)

この発言はしかし、過激な環境保護グループが言っているものではなく、マインツにあるマックス・プランク研究所の化学部門から出たものだ。同研究所の化学部門を代表するヨス・レリーフェルト(Jos Lelieveld)は2人の同僚と共に、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故、2011年に起きたフクシマ原発事故から核の安全性に関し、どのような結論が引き出せるのかを、算出した(Atmospheric Chemistry and Physics, 12巻、4245ぺージ、2012年)。

レリーフェルト氏と彼のチームは、まず原子炉事故をいくつか推定し、それにより放出される放射性物質が、世界中で稼動する440基もの原発のすべてからどのようにひろがっていくかをコンピュータでシミュレーションした。放射性物質の多くはかなり遠くまで飛散し、たとえば事故を起こした原発から1000キロ離れたところまで飛んで降り落ちた。放出される放射性物質の4分の1は、2000キロまで飛んだ。

この研究部分が大気化学者たちが作成した報告に細かに書かれているわけだが、レリーフェルト氏は、原子力事故の頻度に関する推定に対しては、あらゆる意見が存在することを認めている。「でも、批判するなら、どうやるのがいいのかも言ってほしい」と彼は自分を批判する者たちに挑戦的に答えている。

マインツの研究者たちがやった算出方法はこうである:稼動している発電用原子炉の総数を、これまで発生した、大量の放射能が放出された炉心溶融事故の数で割ったのだ。いわゆる「原発最悪事故」はこれまでに4つあった。チェルノブイリで1つ、そしてフクシマで3つである。こうすると、3625運転年ごとに1度最悪事故が起きたことになり、それを研究者たちは1対5000と切り上げた。

彼らは、フクシマでの3つの事故をそれぞれ独立して捉えている。それは、どの原子炉にもそれぞれ独自の安全システムがあって、事故原因が同じであったとしても、本来はそれぞれ独立してその事故に耐えられなければいけなかったはずだからである。この計算を将来に照らして考えてみると、これからまだ20年から25年稼動予定の440基の原発が稼動している間に2度、メルトダウンする可能性があることになる。1990年代に遡るこれまでの安全分析では、このような事故が起きる可能性は1パーセントに過ぎない、とされていた。「私たちの計算では、その200倍以上ということになります」とレリーフェルト氏は語る。

原子力技術の専門家たちは反論を唱えている。「チェルノブイリの事故とフクシマの事故はそれぞれ特別なものであり、典型的な事故とはいえない」と言うのは、国の原発監査で鑑定を務める、ケルンにある原子炉安全協会のホルスト・レッフェラー氏だ。それでも彼は「いい分析がないというだけの理由で、それだけを根拠に炉心溶融の平均確立を算定していいかといえば、それは科学的なことではない」と認めている。

レリーフェルト氏の予想を支持するのは、グリーンピースの原子力専門家、ハインツ・スミタル氏だ。「確かにこれは実にシンプルな推定であり、古い原子炉も新しい原子炉も区別していない。しかし、ほかの方法で行うにはもっと大変な労力がかかり、しかもそれでもその推定がもっと正しいかどうかもわからない」と。


南ドイツでの危険性が一番高い
レリーフェルト氏の分析が次にしたことは、放射能の平均的な放出を見積もることだった。化学者レリーフェルト氏と彼の同僚たちは、ここでチェルノブイリのケースに沿うことにした。「炉心溶融を伴う最悪の事故を想定した場合10%は受け入れられるとして、90%は誇張だ」とホルスト・レッフラー氏は批判している。

2011年3月14日に水素爆発が福島第一原発の3号機を破壊した。この原子炉では炉心溶融に至ったのだ。このような事故の起きる確立は、マインツの学者たちによれば、今まで考えていたよりずっと高いという。

それからマインツの研究者たちは放射性物質、ことに半減期が30年のセシウム137と半減期8日のヨウ素131を風任せにした。彼らはこの大気モデルで、約1週間後に地面に降下していくか、または雨で洗い流されていくまで、放射性物質をコンピュータで追いかけた。

被害を受けやすい地域は、この計算によればアメリカの北東、日本と西ヨーロッパだった。ドイツではこれがことに、西南部、フランスとベルギーとの国境沿い、そしてシュツットガルトとケルンの間である。ここの住民たちは、あまりにたくさんの原発に囲まれているため、セシウムの雲に巻き込まれる危険性が年間2%あるという。

気象状況によりリスクがことに高まるのが5月と7月で、冬は低い。平均して2%。40年間原発事故に遭遇しない可能性は、45%以下である。汚染地帯の基準として、レリーフェルト氏はウィーンにある国際原子力機関の定義を採用した。この定義によれば、自然放射線量が2倍になり、通常の放射線被爆限界値を超える地方が汚染地帯と見なされる。

ドイツ国内での脱原発は、ドイツ人がセシウム雲に覆われる危険性を半分に減らした、とレリーフェルト氏は算出したが、効果は大きいとはいえない。「被爆の危険を減らすには、脱原発は国際的に調整を図りながら進めていくよりないだろう」と彼は述べている。

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