2013年4月22日月曜日

放射線テレックス 2013年4月号


放射線テレックス 2013年4月号
チェルノブイリ原発事故から27年
チェルノブイリの放射性セシウムがいまだにブルーベリージャムに
Strahlentelex 630-631/4.4.2013
27 Jahre nach Tschernobyl
Weiterhin Tschernobyl-Radio-cäsium in Heidelbeermarmelade

人の記憶はかなりいい加減で思い出したくないことは簡単に意識から追いやれるようだが、放射能はそんなことはない。チェルノブイリのことを思い出したくない人はたくさんいるだろうが、土にはしっかりしみこんでおり、土から生命につながっている。今日本の放射能汚染を意識に取り上げようとしない人たちはあとから大きなしっぺ返しを食うことになる。そういう考えが自分でできるようになるために私たちはあんなに何年も学校で勉強してきたのではなかったのだろうか。(ゆう)

チェルノブイリの放射性セシウムがいまだにブルーベリージャムに
日本の横浜にある市民測定所が、ドイツのジャムメーカー「シュヴァルタウ」(Schwartau)製のブルーベリージャムにおいて1キロ当たり22.2±4.6ベクレルのセシウム137による汚染を測定した。セシウム134は含まれていなかった。これは「Schwartau Extra Blueberry Jam」という製品名の、賞味期限が2014年6月26日のもので、原産国「ドイツ」と書かれた340グラムのガラス瓶入りのブルーベリージャムである。この製品のメーカーラベルは英語とギリシャ語で書かれている。

セシウム134がないことから、ここで使われたブルーベリーはチェルノブイリのフォールアウトによって汚染された地域で採れたものとみなすことができる。チェルノブイリ原発事故により発生したセシウム137は、27年後の今もまだ半減期に至っていない。

横浜の市民測定所では、このブルーベリージャムは、全体のセシウム放射能としては日本で適用されている制限値100ベクレル/キロ範囲内であるが、2012年4月から6月にかけて日本の厚生省がおこなった抜き取り検査で、オーストリアのジャムメーカーStaud(シュタウト)、フランスのメーカーLe Potager(ル・ポタジェ)そしてHediard(エディアール)に140~220ベクレル/キロの不特定の放射性セシウムによる汚染が見つかっている、と伝えている。これらのジャムで使用されているブルーベリーはほとんどがポーランド原産で、ごく一部にウクライナ産のものもあった。ヨーロッパでは日本と違い、放射性セシウムの制限値は600ベクレル/キロだ。

横浜の市民測定所が比較として参照しているのが、日本の農林水産省が2012年7月始めから8月半ばまでに行った測定値である。日本製の新鮮なブルーベリーで検出された全体のセシウム量は1~190ベクレル/キロだった。この中で最大の放射線量を測定したサンプルは福島県と宮城県産のブルーベリーであった。市民測定所では福島県の農業総合センターを引き合いに出して「ブルーベリージャム製造では、砂糖やその他の調味料などを入れてもブルーベリーの放射能の量に変化は生じない」と述べている。
http://ycrms.blog.fc2.com

2013年4月12日金曜日

福島原発事故から9ヶ月後に日本で出生率減少


福島原発事故から9ヶ月後に
日本で出生率減少
Rückgang der Geburten in Japan
9 Monate nach Fukushima
放射線テレックス2013年2月号 アルフレット・ケルプライン著(Alfred Körblein)
本文はこちら: http://www.strahlentelex.de/Stx_13_628-629_S02-03.pdf

2011年12月、福島の原子炉事故から9ヵ月後、日本では2006年から2011年の間の傾向と比較し、日本全体で4.7%(p=0.007)、福島県では15%(p=0.0001)という著しい出生率の後退が起きている。同じような事態がヨーロッパ諸国でもチェルノブイリ事故から9ヵ月後の1987年2月に起きた。出生率の減少は1ヶ月に限られていることから、突然の流産が相次いだと考えられる。そしてこれが放射線被ばくによるものであることは、ほぼ明らかである。

背景
日本における乳児死亡率の月ごとのデータを評価した結果、福島原子炉事故の9ヵ月後にあたる2011年12月の出生率は著しく減少していることがわかった(2012年12月号の放射線テレックスを参照 [1]  http://donpuchi.blogspot.de/2012/12/12_19.html)。ここで筆者は、同じような出生率の低下がチェルノブイリ事故の9ヵ月後にバイエルン州でも認められたことを指摘した。

1987年2月のバイエルン州での出生率後退が偶然によるものである可能性を排除するため、筆者は、チェルノブイリのフォールアウトを受けたその他のヨーロッパ諸国の月ごとの出生率データを評価した。

データと方法
以下の国々の生産(訳注:しょうさん、生きて生まれる、の意味、死産の反対)率の月ごとのデータをそれぞれの統計局に問い合わせた。西ドイツ、バイエルン、オーストリア、イタリア、クロアチア、ハンガリー、ポーランド、フィンランドである。キエフ市のデータは筆者が2001年にすでに、キエフ出身のGolubchikov氏より個人的に手に入れてあった。

生産数の傾向は、ポアソン回帰分析(統計パッケージR、関数glm() family=quasipoisson)で評価した。生産年間数は、その年の個々の月に対するダミー変数でモデル生成した。1987年2月の動きの大きさを突き止めるため、さらにダミー変数を用いた。

結果
表1に [1] で紹介した日本全体と福島県の2011年12月の生産率後退の結果が示されている。この両方のデータにおいて2011年12月の動きは著しい(日本全体:P=0.007、福島県:P=0.0001)。

表1:日本全体と福島県における2011年12月の出生率減少




福島県での生産数の時間的移行と出生数予測値からの逸脱は左側の図1に示す。



図1:福島県(左上)とキエフ市(右上)における生産数の経過と回帰ライン
下の図は観測された出生数と予想出生数の間の逸脱を示す(標準化残差)。水平の点線は予測範囲95%を示す。



調査されたヨーロッパ諸国とキエフ市における1987年2月の出生不足に関する結果を表2に示す。11.5%の出生率減少と、南バイエルン(オーバーバイエルン行政管区、ニーダーバイエルン行政管区、シュヴァーベン地方)が一番顕著(P=0.0009)である。南バイエルンは、ドイツの中でもチェルノブイリのフォールアウトが一番激しかった地方である。それに比べ被害が少なかった北バイエルンではこの動きはあまり目立たない(−5.2%、P=0.160)。著しい出生率減少を示したのがバイエルン(−8.6%、P=0.009)、イタリア(−6.8%、P=0.017)、クロアチア(−8.2%、P=0.007)、ポーランド(−4.6%、P=0.050)である。西ドイツ、オーストリア、ハンガリー、フィンランドでは結果は10%のレベルでのみ顕著である(P<0.10)。


表2:ヨーロッパ諸国/地方における出生率減少


出生率の減少が一番顕著なのがキエフ(図1、右側)であり、ここではこの傾向が2月だけでなく、1987年の最初の6ヶ月にわたって続いている。1987年1月から3月まで期間の出生数不足はことに著しい(−27.3%、P<0.0001、2484件出生が不足しており、そのうち817件が2月)。

図2に南バイエルン、ポーランド、クロアチアの生産数の残差を示す。比較のため、日本での2006年から2011年までの残差も示した。


図2:4カ国または地方で観測された出生数と予想出生数の間の逸脱(残差)、および予測範囲95%




論争
図2からわかるように、出生数の後退は日本でも南バイエルン、クロアチアでも1ヶ月に限定されている。ポーランドとキエフでのみ、1987年の1月から3月の期間にわたり続いている(4.9%、P=0.0004、7803件出生数が不足)。これは、出生数が、受精から間もなく流産が多く発生して起きた結果による後退だということを示唆している。

この調査結果から、流産が放射線被ばくによるものだと考えるのが妥当である:

・原子炉事故によるフォールアウト被害を受けた国または地方でこの傾向が見られる
・この傾向は原子炉事故発生とそれに伴う放射線被ばくからちょうど9ヵ月後に起きている
・この傾向は、放射線被ばく量が高ければ高いほど、顕著に見られる


堕胎が増加したのであれば、出生率の後退は1987年2月より前、または2011年12月より前の月々で見られたであろう。妊娠を自粛した結果であるのならば、2月より前の月々でそれがはっきり現れるであろう。しかし、実際にはそうではない。南バイエルンとクロアチアでは、1987年の1月にも、3月にも予測値からの著しい逸脱は見られない。それと同じことが日本の2011年11月や2012年1月に対しても当てはまる。だからこそ筆者は、原子炉事故発生後の初めの数週間の間に放射線被ばくを受けた結果、自然流産が多く発生したのだということが、この出生率後退を説明する最も確率の高い原因だと考える次第である。

2013年4月10日水曜日

放射線テレックス(2013年2月号)


放射線テレックス(2013年2月号)
福島県住民の甲状腺被ばく量は大したことないというが、
実際は甲状腺被ばく量測定は行われていない
Die Schilddrüsendosiswerte von Bewohnern der japanischen Präfektur Fukushima sollen unbedenklich sein

Nr. 626 – 627 / 2013原文はこちら:http://www.strahlentelex.de/Stx_13_626-627_S06-07.pdf

2013年1月27日に東京で行われたシンポジウムで、日本の学者たちは、福島原発事故直後に行われた甲状腺検診の評価を通して、福島原発事故により大気中に飛散されたヨウ素による住民への危険性はないという結論を出した。日本の環境省は2012年に千葉県にある国立の放射線総合医学研究所(放医研、独立行政法人)に、福島原発事故後の放射線被爆の実態を科学的に検証するよう依頼した。朝日新聞の報告によれば(注1: http://apital.asahi.com/article/news/2013012700002.html、放医研でこのプロジェクトを代表する栗原治氏は、放医研の内部被ばく評価につき、甲状腺検査を受けた児童1,080人、および放射性セシウムによる内部被ばく検査を受けた成人300人のデータから、体内の放射性ヨウ素の濃度はセシウム137の3倍だと仮定した。

線量がとりわけ高い双葉町、飯舘村、川俣町、浪江町の住民約3000人のセシウム内部被ばく線量から、甲状腺被ばく線量を推計したと栗原氏は語っている。この推計によれば、飯舘村に住む1歳児が30ミリシーベルトと最も高い被ばく量を示している。双葉町での最高の被ばく量は27ミリシーベルト、そしてその他の地方では18ミリシーベルトと2ミリシーベルトの間だったという。国際基準では限界値は50ミリシーベルトなので、この値を超える被ばくがなければ、ヨウ素剤を予防薬として飲む必要はない、ということだ。

甲状腺被ばくが証明できなくても(放射性ヨウ素131は半減期が8日である)、福島原発事故で許容量以上の被ばくを受けた住民はいないであろう、とのことだ。なお、この研究結果は中間結果であり、最終結果とみなしてはいけないそうだ。

シンポジウムの討論会では「ヨウ素とセシウムの比率はもっと高い可能性もある」などの意見が出たと朝日新聞は報告している。

デアゼーのコメント:この日本の学者たちによる結論はかなり大胆である。チェルノブイリ事故後のソ連と同じように、ここでも甲状腺の被ばく線量は実際には測量されていず、単に推計したに過ぎない。広島大学の原爆放射線医科学研究所で仕事をする小児科医の田代聡教授は、原発事故の後、広島で2012年3月9日に行われた講演会で、甲状腺被ばく線量の測定に関する方法または状況について以下のように述べている(注:http://www.hiroshima.med.or.jp/ippnw/sokuho/docs/2151_006.pdf

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)が事故当初から充分に活用されていれば、住民の避難はスムーズに実施されていたはずだがhttp://ma.med.or.jp/ippnw/sokuho/docs/、実際の発表は2011年3月23日になってからだった。そして大きな問題はここにある。つまり、子供が一日中部屋の外で過ごしたら、100ミリシーベルトの被ばくを受けたことになる地方が、避難地域に指定された半径30キロメートル以外のところにもあることで、たとえば飯舘村、川俣町、いわき市などはそうした例で、これらの地方は避難勧告を受けなかったのである。

放射性ヨウ素の半減期は短いため、検査は早急に行われなければならない。原子力安全委員会の助言のもとに、なるべく多くの人たちの甲状腺被爆調査を行い、スクリーニングレベルを0.2マイクロシーベルト/毎時とした。これは、甲状腺等価線量で100ミリシーベルトに相当するという試験結果が放影研より出ているためである。まず、バックグラウンドが毎時0.2マイクロシーベルト以下の場所を探し、そこにスクリーニング会場を設置した。本来なら専門施設での計測が望ましいが、当時は震災の混乱が収まっておらず、またNaIサーベイメータが被ばく検査のために福島に集められていたので、このような形で簡易検査が実施された。

実際には現地でスクリーニングすることが可能な会場を探すのも大変だった。例えば、飯舘村では屋外は平均毎時8マイクロシーベルト、屋内でも3〜7マイクロシーベルト、土の上1cmだと約20マイクロシーベルトであり、唯一バックグラウンドの低い場所は、村議会の議長席裏のスペースだった。川俣町では立派な公民館の2階の一角が0.2マイクロシーベルト以下だった。人の出入りやドアの開閉でも線量が上がるので、建物に入る前に身体の汚染を検査し、玄関でも靴を脱ぎ、問診し、測定場所の前で集まってもらった後に、一人ずつ測定場所に入れて、やっとサーベイメータを子供の前頸部にあてることが出来た。

いわき市、川俣町、飯舘村の3市町村で合計約1,000名の子供を計測することが出来た。最高で毎時0.1マイクロシーベルトの子供が1名いたが、この子供は4歳という年齢を考慮すると35ミリシーベルト程度になるとされている。99%が毎時0.04マイクロシーベルト以下、半分以上の子供からは検出されず、全体的に見ると重篤な甲状腺被害を受けた子供は限定的であると推定される。実際には子供の被ばくを防ぐために、母親が子供を2週間外出させなかったり、水は自治体が用意したりと、集団で子供を守ったのがよい結果につながったと思われる…

以上が田代教授の報告内容である。よく考えてほしい。ここに挙げた毎時マイクロシーベルト単位での測定結果をミリシーベルトの甲状腺等価線量に算出しなおした値は、実際に子供の前頸部で測定された値と、高くなっているバックグラウンドの線量との差から出てくるものだ。甲状腺の被ばく量とバックグラウンドの線量が同じ値である場合には、この方法は使えないのである。甲状腺という臓器の等価線を出すには、甲状腺における放射性ヨウ素の放射能レベルを突き止めなければいけないはずである。ということは、実際には本当の意味での甲状腺測定は行われなかったということだ。これは福島の住民にも知られている事実である。福島で甲状腺スクリーニング検査を行っている鈴木眞一教授は、2012年11月10日に福島市で行われた一般説明会ですでに、実際に測定を行っていないのに、どうしてチェルノブイリよりずっと値が低いなどと主張できるのか、と非難されている。