2012年10月27日土曜日

福島の魚の放射能汚染は今も変わらず


オンライン・シュピーゲル 2012年10月25日付
日本の原発事故
福島の魚の放射能汚染は今も変わらず
クリストフ・ザイドラー(Christoph Seidler) 著
Reaktorkatastrophe in Japan 
Fukushima-Fische strahlen noch immer


事故の規模を考えれば当然のことで、今更驚くことではないが、海と山の幸で生きてきたはずの日本人が、これだけ「すでにしてしまったこと(起こったこと、ではない、自分が加害者である)、それが原因で今起きていること」に関し、かくも鈍感、いや鈍感以上にどうしてこんなに(知っていて)目をつぶろうとするのかは、どうしてもわからない。日本人は、八百万の神々をあらゆるところに祀って、その怒りを鎮めようと祭りごとを行ったり、豊穣に感謝したりしてきたのではなかったのだっけ? もともと「まつり」という言葉は、「たてまつる」から来ており、神々を奉る祭祀を司るも、政治を司るも、同じ意味ではなかったのだっけ? 政治の政は「まつり」でもある。今の政治家が祀っているのは時には恐ろしい姿も現す、人知、人力及ばぬ偉大な自然ではなくて、「経済」という名の、貪欲で顔なしのお化けになってしまった。(ここでもう一度、宮崎駿の「千と千尋…」をようく思い出してみよう。あの「顔なし」や顔がひん曲がりそうになるほど臭い神の体内から出てきた汚物のことを…)
この記事、また英国「サイエンス」誌などでの報道に関し、梶村太一郎さんがそのブログで詳しく報告していらっしゃるので、そちらもご覧ください。(ゆう)
http://tkajimura.blogspot.de/2012/10/blog-post_26.html



ガイガーカウンター持参で買い物(2011年4月一ノ宮で撮影):
放射能物質は今でも食物連鎖に入り込んでいる。
つい最近も、カリフォルニア沿岸で汚染されたマグロが捕獲されたばかりだ。
放射線量は日本の制限値を下回ってはいたが…


事故のあった福島原発近郊の海でとれる魚の放射能汚染は、1年半前と変わっていないことが、最新の研究調査でわかった。いまだに放射能源が2つもあって、それが海の生物を汚染しているため、汚染値が下がらないのである。

東京 / ハンブルク:セシウム134、セシウム137、ヨウ素131 … フクシマの原発事故直後、科学者たちは事故を起こした原発が隣接する海水でこれらを測定した。海には放出された全体の放射線値のうち、80パーセントが行った、汚染水を通じて、または海のほうに流れた放射能の雲によって。

国民を守るために日本の官庁は、事故を起こした原発付近の海水での魚類の捕獲を禁止した。さらに許容汚染制限値が下げられた。原発事故の前からドイツではほとんど日本から魚は輸入されていないので、ドイツの魚愛好者たちは心配する必要はない。

フクシマの原発事故が起きてから、すでに1年半が経っている。しかし生物の放射能汚染は低下していない、という結果がこのたび、アメリカのマサセッチューセッツ州にあるWoods Hole Oceanographic Institutionという海洋研究所の研究員Ken Buesseler氏が、科学雑誌「サイエンス」最新号に発表した研究で明らかにされた。

事故後2週間も経たない2011年3月23日以来、日本の農林水産省が福島県だけでなくほかの県でも海洋生物を組織的に調査している。この時の農林水産省の調査結果をもとに、Buesseler氏の調査は行われた。彼は全体で8500件以上の個体測定結果を評価した。

それでわかったことは、次のとおりだ。ほかの県に比べ、福島県で捕れる魚は、平均を上回って強く汚染されている。調査された魚の約40パーセントが、1キロ当たり100ベクレルという制限値を超えている。ただし、結果は魚の種類によってかなり異なる、ということである。

福島県より東にある茨城県でも、ほとんどの場合で制限値をわずかに上回っただけとはいえ、許容されているより高い汚染が確認される魚があった。福島より北にある宮城県で許容値より汚染度が高かった魚は4尾だけ、そして岩手県、千葉県では、調査された魚はすべて、許容値を下回っていた。

測定値のばらつきには注目すべきであろう。ことに汚染度が高いのは、海底に生息する魚である。福島県沖では8月に1キロ当たりなんと25000ベクレルも放射能汚染されているアイナメが見つかっている。これは制限値を250倍も上回っている。

「値はちっとも下がらない」
今回の調査で驚くべきことはしかし、このような統計的に「珍しい例」ではなく、なぜいまだに海洋生物が1年半前と同じように放射性セシウムにこれほど汚染されているのかという疑問である。「値はちっとも下がらないのです」と、シュピーゲル・オンラインの質問にBuesseler氏は答えた。普通なら魚は摂取した放射線物質を毎日数パーセントずつ排泄する。しかし、魚たちは明らかに、どんどん新しく放射性物質を体内に取り込んでいるらしい。

彼に言わせれば、日本官庁の測定を疑う理由はないという。Buesseler氏は独自に2011年夏に測定を行い、同じような結果に達しているとのことだ。従って、データは次のようにしか解釈することはできない、すなわち、今でも放射線で汚染された水が原子炉から海に流れ込んでいる、それから汚染されている海底の土が常に放射線物質を海水に放出している、ということだという。「このプロセスが両方とも並行に進行しているのです」とBuesseler氏は言う。

ということは、放射性物質がさらに食物連鎖に入りこむということである。カリフォルニア沿岸でも、汚染されたマグロが見つかっている。放射線量は日本の制限値を下回ってはいたということだが…

Buesseler氏は彼の調査結果でパニックを引き起こしたいわけではない。例えば、対象となった地域の海水で泳いでも、心配することはない、魚を1尾くらい食べても、大して問題はない、という。しかし、彼が心配するのは、汚染が持続している事実だ。「事故の実際の規模がどれだけのものであったかを公に議論するために、測定結果は重要だ」と彼は語る。

汚染がはっきりした場所ではこれからも漁業が行われるべきではないと、彼は要求している。それも、数ヶ月ではなく、何年もの間である。真実のところ、おそらく何十年といった単位であろう。破壊した原子炉から海に排出される汚染水がたとえいつか止まったとしても、この問題はまだ長い間持続するだろう。

セシウム137の環境での半減期は、30年である。


2012年10月16日火曜日

キューバの女子欠落問題


キューバの女子欠落問題
Kubamädchenkrise

20121011日付ツァイト紙

先日、フクシマをたびたび訪れ、あらゆる正当な警鐘を鳴らしている核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の医師たちが世界保健機構(WHO)に、福島での健康調査を拡大、疫学調査を実行し、すでにミリシーベルト以上の被爆をしてしまった人たちの包括的な記録作成を始めることを申請する手紙を読む機会があったが、その中でIPPNWの医師たちが、ことにこれからの福島近郊での生殖に関する影響(奇形、死産、流産、そして “verlorene Mädchen“〔姿を消す女の子たち〕の現象)について組織的に調査していくべきだと言っている。この「姿を消す女の子たち」というのは、被爆によって女子の出生率が低下する現象で、これはチェルノブイリ後、ウクライナを始め、ヨーロッパ各地で見られた事実だ。そうしたら、ツァイト紙で以下に訳すような小さい記事を見つけた。放射能にはまったく国境はない。まして、日本も今、あらゆる形で放射能に汚染されたものを国内のみならず、海外に撒き散らしているのだ。現在進行中のことは、これがSFでなく現実だと思えば思うほど怖く、気が滅入る。(ゆう)

本文は、残念ながらオンラインのツァイト版では見られません。

キューバの女子欠落問題

フィクションが現実に追いつくのを待つには、忍耐が必要だ。しかしこの忍耐は時として報いられることがある。ウクライナのチェルノブイリで原子炉が爆発したのは26年以上も前のことで、実際の被害者の数はこれまで常に予想よりぎくしゃくと少ない方へずれてきた。

しかし、今になってやっと異様な事実が現れた。キューバの出生統計である。これによると、チェルノブイリ事故の1年後である1987年に出生した男女の比率がめちゃくちゃになってしまっていたことがわかった。女子100人に対し、男子は118人という率である。「American Journal of Epidemiology」を書いた著者は、この「キューバでの女子欠落減少」に対し「生物学上明確にできる説はない」としている。しかし、「zeo2」という雑誌が調査をさらに進め、説明を見つけることに成功した。チェルノブイリ事故があったときは、まだ冷戦時代だった。キューバにいる社会主義の兄弟たちに放射能で汚染された食品を送ったのは誰だ? ソ連である。ソビエト連邦に所属していたのは? ウクライナである。これで「女の子の欠落」は説明がついた。

2012年10月5日金曜日

原発ストレステスト


原発ストレステスト
落第点の多いヨーロッパの原発
南ドイツ新聞2012年10月1日付

原発を牛耳る輩は、どこも似たり寄ったり。日本の記事ばかり追っていると、あれほどのことがあって、これだけ地震が多く、火山だらけの島国でなぜ、とどうしたってこの原発にしがみつく吸血鬼たちの様子に頭を振るばかりだが、それは世界でも同じようである。「原発は安い」「二酸化炭素を出さない」という嘘はヨーロッパでもまかり通っているし、少しでも金のかかる安全対策は、すぐに踏みにじられるのは、経済というロジックが本当に人間の生活、生命とは別のところで論じられていることがわかる。どうしてこれだけのことがあって、皆目を覚まさないのか。(ゆう)
原文はこちら:http://www.sueddeutsche.de/politik/stresstest-fuer-atomkraftwerke-schlechte-noten-fuer-europas-meiler-1.1484339

チェルノブイリとフクシマの事故が起きてしまったからには、これからはすべて改善され、より安全にしなければならない。というわけでEUの原発でストレステストを行い、その結果が発表された。数多くの原発に欠陥が見出された。ドイツでも、である。

診断結果は明らかだが、その通達にはためらいがある。というのも、通達内容が厄介ものだからだ。ヨーロッパの原発には重大な欠陥がある。EU内で稼動している原発134基の安全基準はかなりまちまちである。1986年のチェルノブイリ事故後も、合意した安全対策をまったく実現しなかった原発がかなりあった。ドイツの原発でも、成績の悪いものが一部にあった。

以上のことが、南ドイツ新聞が手に入れた、ヨーロッパの原発(EUのほかにもスイスとウクライナが参加)で行われたストレステストの最終報告書の草案にすべて書かれてある。エネルギー担当委員であるギュンター・エッティンガーは、この報告書を水曜日にブリュッセルで同僚たちに提出することになっている。その後、この報告書はまた密封されて閲覧できなくなる。公衆が公式にこれらの欠陥について知ることになる前に、10月18日と19日にブリュッセルで、ヨーロッパ各国とその政府首相たちはこれらの情報を掴まなくてはならないのだ。

これは不愉快なことになりそうな気配である。というのも、欧州委員会では、これから数年、安全上の欠陥を改善するためには、既存の原発1基ずつにあたり3千万ユーロから2億ユーロを投資しなければならないと見積もっているからだ。つまり、合計で100億から250億ユーロである。これほどの額を出すのは、どの政府にとっても楽なことではない。わずかな金もユーロ危機の克服のために流出が求められる今となってはなおさらだ。「改善の必要性がこのまま残るとすれば、大問題を抱えることになる国がいくつもあるだろう」と、ブリュッセルのあるEU高官が語った。

フランスはヨーロッパ全体で一番の欠陥リストを抱えている。フランスはヨーロッパの中で一番多く原発を稼動している。しかし、ドイツの原発にも欠陥がある。委員会は、設置されている地震警告システムが不十分だと批判している。さらに、国際原子力機関(IAEA)が要求している重大事故の際の指導基準も不完全にしか実現されていないという。月曜日にエッティンガーは、これらの欠陥を「過小評価」してみせようとした。一般の安全に関する状況は「満足のいくものだ」とエッティンガーはスポークスマンに言わせている。ただし、「だからといっていい加減にすることは許されない」と。

約束した改善策を実現せず
ストレステストをめぐっては初めから評価が定まらず、環境保護者たちは、ストレステストは不十分だと批判していた。もともとエッティンガーはテロリストによる攻撃やサイバーテロなどもテスト対象に入れたかったのだが、フランスとイギリスがこの案に強く反対して、ストレステストは結局、ことに洪水や地震などの自然災害だけに主に集中して行われることになってしまった。テロ攻撃やサイバーテロの危険については別の独自のグループが担当して検討したが、このグループが5月に公開した結果はかなり曖昧なもので、ことにIAEAの推奨に従うよう求めている。IAEA自体は、「管理機能」は一切果たしていないことを強調している。

調査報告書はまず、国内の原発を稼動する会社や官庁によって作成され、それから外国およびEU委員会の専門家チームによって審査されることになっていた。しかし、これさえもやりすぎだと思う者があったようで、管理チームを構成するに当たって国が拒否権を保持する合意ができた。6月には最終的報告書ができていなければならなかったのだが、38基の原発しか訪問調査されなかったことから、エッティンガーが追加改善を求めた。安全性の欠陥が批判されたチェコのテメリンにある原発や、フランスのフェッセンハイムなどは、文書上だけで審査されたという。9月になって初めて、さらに8基の原発が訪問されて調査をやり直した。

環境保護団体BUNDは、エネルギー政策転換を早く行うよう求めている。「真の安全は、原発を止めることからしか得ることはできない」とBUND代表のフーベルト・ヴァーグナー氏は語る。緑の党連邦議員団のシルヴィア・コッティング=ウール氏も、同じ意見だ。「調査結果を重視するなら、筋の通った結論を導き出さなければならない。フクシマがあった今でも、約束された安全改善策は実現されていないのが現実だ」と。