2013年4月10日水曜日

放射線テレックス(2013年2月号)


放射線テレックス(2013年2月号)
福島県住民の甲状腺被ばく量は大したことないというが、
実際は甲状腺被ばく量測定は行われていない
Die Schilddrüsendosiswerte von Bewohnern der japanischen Präfektur Fukushima sollen unbedenklich sein

Nr. 626 – 627 / 2013原文はこちら:http://www.strahlentelex.de/Stx_13_626-627_S06-07.pdf

2013年1月27日に東京で行われたシンポジウムで、日本の学者たちは、福島原発事故直後に行われた甲状腺検診の評価を通して、福島原発事故により大気中に飛散されたヨウ素による住民への危険性はないという結論を出した。日本の環境省は2012年に千葉県にある国立の放射線総合医学研究所(放医研、独立行政法人)に、福島原発事故後の放射線被爆の実態を科学的に検証するよう依頼した。朝日新聞の報告によれば(注1: http://apital.asahi.com/article/news/2013012700002.html、放医研でこのプロジェクトを代表する栗原治氏は、放医研の内部被ばく評価につき、甲状腺検査を受けた児童1,080人、および放射性セシウムによる内部被ばく検査を受けた成人300人のデータから、体内の放射性ヨウ素の濃度はセシウム137の3倍だと仮定した。

線量がとりわけ高い双葉町、飯舘村、川俣町、浪江町の住民約3000人のセシウム内部被ばく線量から、甲状腺被ばく線量を推計したと栗原氏は語っている。この推計によれば、飯舘村に住む1歳児が30ミリシーベルトと最も高い被ばく量を示している。双葉町での最高の被ばく量は27ミリシーベルト、そしてその他の地方では18ミリシーベルトと2ミリシーベルトの間だったという。国際基準では限界値は50ミリシーベルトなので、この値を超える被ばくがなければ、ヨウ素剤を予防薬として飲む必要はない、ということだ。

甲状腺被ばくが証明できなくても(放射性ヨウ素131は半減期が8日である)、福島原発事故で許容量以上の被ばくを受けた住民はいないであろう、とのことだ。なお、この研究結果は中間結果であり、最終結果とみなしてはいけないそうだ。

シンポジウムの討論会では「ヨウ素とセシウムの比率はもっと高い可能性もある」などの意見が出たと朝日新聞は報告している。

デアゼーのコメント:この日本の学者たちによる結論はかなり大胆である。チェルノブイリ事故後のソ連と同じように、ここでも甲状腺の被ばく線量は実際には測量されていず、単に推計したに過ぎない。広島大学の原爆放射線医科学研究所で仕事をする小児科医の田代聡教授は、原発事故の後、広島で2012年3月9日に行われた講演会で、甲状腺被ばく線量の測定に関する方法または状況について以下のように述べている(注:http://www.hiroshima.med.or.jp/ippnw/sokuho/docs/2151_006.pdf

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)が事故当初から充分に活用されていれば、住民の避難はスムーズに実施されていたはずだがhttp://ma.med.or.jp/ippnw/sokuho/docs/、実際の発表は2011年3月23日になってからだった。そして大きな問題はここにある。つまり、子供が一日中部屋の外で過ごしたら、100ミリシーベルトの被ばくを受けたことになる地方が、避難地域に指定された半径30キロメートル以外のところにもあることで、たとえば飯舘村、川俣町、いわき市などはそうした例で、これらの地方は避難勧告を受けなかったのである。

放射性ヨウ素の半減期は短いため、検査は早急に行われなければならない。原子力安全委員会の助言のもとに、なるべく多くの人たちの甲状腺被爆調査を行い、スクリーニングレベルを0.2マイクロシーベルト/毎時とした。これは、甲状腺等価線量で100ミリシーベルトに相当するという試験結果が放影研より出ているためである。まず、バックグラウンドが毎時0.2マイクロシーベルト以下の場所を探し、そこにスクリーニング会場を設置した。本来なら専門施設での計測が望ましいが、当時は震災の混乱が収まっておらず、またNaIサーベイメータが被ばく検査のために福島に集められていたので、このような形で簡易検査が実施された。

実際には現地でスクリーニングすることが可能な会場を探すのも大変だった。例えば、飯舘村では屋外は平均毎時8マイクロシーベルト、屋内でも3〜7マイクロシーベルト、土の上1cmだと約20マイクロシーベルトであり、唯一バックグラウンドの低い場所は、村議会の議長席裏のスペースだった。川俣町では立派な公民館の2階の一角が0.2マイクロシーベルト以下だった。人の出入りやドアの開閉でも線量が上がるので、建物に入る前に身体の汚染を検査し、玄関でも靴を脱ぎ、問診し、測定場所の前で集まってもらった後に、一人ずつ測定場所に入れて、やっとサーベイメータを子供の前頸部にあてることが出来た。

いわき市、川俣町、飯舘村の3市町村で合計約1,000名の子供を計測することが出来た。最高で毎時0.1マイクロシーベルトの子供が1名いたが、この子供は4歳という年齢を考慮すると35ミリシーベルト程度になるとされている。99%が毎時0.04マイクロシーベルト以下、半分以上の子供からは検出されず、全体的に見ると重篤な甲状腺被害を受けた子供は限定的であると推定される。実際には子供の被ばくを防ぐために、母親が子供を2週間外出させなかったり、水は自治体が用意したりと、集団で子供を守ったのがよい結果につながったと思われる…

以上が田代教授の報告内容である。よく考えてほしい。ここに挙げた毎時マイクロシーベルト単位での測定結果をミリシーベルトの甲状腺等価線量に算出しなおした値は、実際に子供の前頸部で測定された値と、高くなっているバックグラウンドの線量との差から出てくるものだ。甲状腺の被ばく量とバックグラウンドの線量が同じ値である場合には、この方法は使えないのである。甲状腺という臓器の等価線を出すには、甲状腺における放射性ヨウ素の放射能レベルを突き止めなければいけないはずである。ということは、実際には本当の意味での甲状腺測定は行われなかったということだ。これは福島の住民にも知られている事実である。福島で甲状腺スクリーニング検査を行っている鈴木眞一教授は、2012年11月10日に福島市で行われた一般説明会ですでに、実際に測定を行っていないのに、どうしてチェルノブイリよりずっと値が低いなどと主張できるのか、と非難されている。


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