2012年10月5日金曜日

原発ストレステスト


原発ストレステスト
落第点の多いヨーロッパの原発
南ドイツ新聞2012年10月1日付

原発を牛耳る輩は、どこも似たり寄ったり。日本の記事ばかり追っていると、あれほどのことがあって、これだけ地震が多く、火山だらけの島国でなぜ、とどうしたってこの原発にしがみつく吸血鬼たちの様子に頭を振るばかりだが、それは世界でも同じようである。「原発は安い」「二酸化炭素を出さない」という嘘はヨーロッパでもまかり通っているし、少しでも金のかかる安全対策は、すぐに踏みにじられるのは、経済というロジックが本当に人間の生活、生命とは別のところで論じられていることがわかる。どうしてこれだけのことがあって、皆目を覚まさないのか。(ゆう)
原文はこちら:http://www.sueddeutsche.de/politik/stresstest-fuer-atomkraftwerke-schlechte-noten-fuer-europas-meiler-1.1484339

チェルノブイリとフクシマの事故が起きてしまったからには、これからはすべて改善され、より安全にしなければならない。というわけでEUの原発でストレステストを行い、その結果が発表された。数多くの原発に欠陥が見出された。ドイツでも、である。

診断結果は明らかだが、その通達にはためらいがある。というのも、通達内容が厄介ものだからだ。ヨーロッパの原発には重大な欠陥がある。EU内で稼動している原発134基の安全基準はかなりまちまちである。1986年のチェルノブイリ事故後も、合意した安全対策をまったく実現しなかった原発がかなりあった。ドイツの原発でも、成績の悪いものが一部にあった。

以上のことが、南ドイツ新聞が手に入れた、ヨーロッパの原発(EUのほかにもスイスとウクライナが参加)で行われたストレステストの最終報告書の草案にすべて書かれてある。エネルギー担当委員であるギュンター・エッティンガーは、この報告書を水曜日にブリュッセルで同僚たちに提出することになっている。その後、この報告書はまた密封されて閲覧できなくなる。公衆が公式にこれらの欠陥について知ることになる前に、10月18日と19日にブリュッセルで、ヨーロッパ各国とその政府首相たちはこれらの情報を掴まなくてはならないのだ。

これは不愉快なことになりそうな気配である。というのも、欧州委員会では、これから数年、安全上の欠陥を改善するためには、既存の原発1基ずつにあたり3千万ユーロから2億ユーロを投資しなければならないと見積もっているからだ。つまり、合計で100億から250億ユーロである。これほどの額を出すのは、どの政府にとっても楽なことではない。わずかな金もユーロ危機の克服のために流出が求められる今となってはなおさらだ。「改善の必要性がこのまま残るとすれば、大問題を抱えることになる国がいくつもあるだろう」と、ブリュッセルのあるEU高官が語った。

フランスはヨーロッパ全体で一番の欠陥リストを抱えている。フランスはヨーロッパの中で一番多く原発を稼動している。しかし、ドイツの原発にも欠陥がある。委員会は、設置されている地震警告システムが不十分だと批判している。さらに、国際原子力機関(IAEA)が要求している重大事故の際の指導基準も不完全にしか実現されていないという。月曜日にエッティンガーは、これらの欠陥を「過小評価」してみせようとした。一般の安全に関する状況は「満足のいくものだ」とエッティンガーはスポークスマンに言わせている。ただし、「だからといっていい加減にすることは許されない」と。

約束した改善策を実現せず
ストレステストをめぐっては初めから評価が定まらず、環境保護者たちは、ストレステストは不十分だと批判していた。もともとエッティンガーはテロリストによる攻撃やサイバーテロなどもテスト対象に入れたかったのだが、フランスとイギリスがこの案に強く反対して、ストレステストは結局、ことに洪水や地震などの自然災害だけに主に集中して行われることになってしまった。テロ攻撃やサイバーテロの危険については別の独自のグループが担当して検討したが、このグループが5月に公開した結果はかなり曖昧なもので、ことにIAEAの推奨に従うよう求めている。IAEA自体は、「管理機能」は一切果たしていないことを強調している。

調査報告書はまず、国内の原発を稼動する会社や官庁によって作成され、それから外国およびEU委員会の専門家チームによって審査されることになっていた。しかし、これさえもやりすぎだと思う者があったようで、管理チームを構成するに当たって国が拒否権を保持する合意ができた。6月には最終的報告書ができていなければならなかったのだが、38基の原発しか訪問調査されなかったことから、エッティンガーが追加改善を求めた。安全性の欠陥が批判されたチェコのテメリンにある原発や、フランスのフェッセンハイムなどは、文書上だけで審査されたという。9月になって初めて、さらに8基の原発が訪問されて調査をやり直した。

環境保護団体BUNDは、エネルギー政策転換を早く行うよう求めている。「真の安全は、原発を止めることからしか得ることはできない」とBUND代表のフーベルト・ヴァーグナー氏は語る。緑の党連邦議員団のシルヴィア・コッティング=ウール氏も、同じ意見だ。「調査結果を重視するなら、筋の通った結論を導き出さなければならない。フクシマがあった今でも、約束された安全改善策は実現されていないのが現実だ」と。

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